ニュースの概要
NHKニュースによると、自動運転のトラックが一般道での走行試験に初めて成功した。来年1月には、実際に荷物を運ぶ商用運行の開始を目指しているという。これまで国内で進んできた自動運転トラックの実証は、車線や合流の条件が比較的そろった高速道路や専用の区間が中心だった。信号、交差点、歩行者、路上駐車といった予測しにくい要素が多い一般道での成功は、実用化に向けた次の段階に入ったことを意味する。深刻なドライバー不足を抱える物流業界にとって、荷物の積み降ろし拠点から拠点までを機械に任せられる可能性が見えてきた。一方で、事故が起きたときの責任や運用ルールの整備は、まだ道半ばである。
引用元: 自動運転トラック 一般道で初成功 来年1月の商用運行目指す(NHKニュース)
分析・見解
高速道路より一般道が難しい三つの理由
自動運転の難しさは、道路の種類で大きく変わる。高速道路は一方通行で歩行者も信号もなく、周囲の動きも読みやすい。これに対して一般道は、状況の読み取りがはるかに複雑になる。
第一に、信号と交差点がある。対向車の右折や、赤信号をすり抜ける車への対応が必要になる。第二に、歩行者や自転車が突然現れる。第三に、路上駐車や工事で、車線を一時的にはみ出す判断が求められる。トラックは車体が大きく、ブレーキをかけてから止まるまでの距離も長い。乗用車と同じ感覚では危険を避けきれない点が、さらに難度を上げている。
商用運行まで約3か月という日程の意味
来年1月の商用運行という目標は、技術の完成を宣言するものではない。むしろ、限定された条件のもとで先に事業を始め、実走行のデータを集めて精度を上げていく方針とみるべきである。
ここで参考になるのが、国内の先行例だ。新東名高速道路の一部区間では、自動運転レベル4(=特定の条件下ではシステムがすべて運転する段階)を想定した実証が進められてきた。専用レーンや走行時間帯を絞り、リスクを下げながら距離を延ばす手法である。一般道でも同じ発想になる。走る道、時間帯、天候を限定して始め、条件を少しずつ広げていくだろう。
実は後続車と周辺住民の受け止め方が壁になる
あまり語られない論点がある。技術面の次に効いてくるのは、周囲の人間がどう反応するかだ。自動運転車は規則を忠実に守るため、法定速度ぴったりで走り、黄色信号では止まる。人間の運転はもう少し流れに合わせて動くので、後ろの車がいらだつ場面が増えるかもしれない。
米国のサンフランシスコでは、自動運転タクシーが急停止して交通を妨げたとして、住民から苦情が相次いだ例がある。技術的に正しい動きでも、地域の受け入れが追いつかなければ運行は止まりかねない。住民説明や、車体に自動運転中と分かる表示を付ける工夫が欠かせない。
本格普及に向けて残る法制度と保険の宿題
日本では2023年4月の改正道路交通法で、レベル4の公道走行が認められた。ただし許可制で、事業者は走行ルートごとに安全性を示す必要がある。事故が起きたときの責任の分担や、保険の設計は、まだ整理の途中にある。
運転手が乗らない以上、車両の製造元、システム開発者、運行する運送会社のどこが責任を負うのか。この線引きが決まらなければ、運送会社は導入に踏み切りにくい。法整備のスピードが、事業の拡大ペースを決めるだろう。
ビジネスへの影響
運送会社が今のうちに進めておくべき三つの準備
商用運行が始まっても、すぐに全国で使えるわけではない。まずは幹線の一部区間に限られる見通しだ。それでも、準備の差は後で効いてくる。
一つ目は、自社の運行データの整理である。どの区間に、どの時間帯の荷物が多いかを把握しておけば、自動運転の対象区間と照らし合わせやすい。二つ目は、拠点の見直しだ。自動運転は拠点間の長距離に向くため、積み降ろしを担う人材と、短距離配送を担う人材を分ける発想が必要になる。三つ目は、保険会社との早めの相談である。
荷主企業は輸送コストと調達先の再設計を
荷主側にも影響は及ぶ。長距離輸送のコストは、人件費の割合が大きい。自動運転が広がれば、夜間の連続運行ができるようになり、リードタイム(=発注から納品までの時間)の短縮と、運賃の安定につながる可能性がある。
一方で、導入初期は自動運転対応の車両や設備に投資がかかり、運賃が下がるとは限らない。補助金制度や実証事業への参加条件を、早い段階で確認しておきたい。
当面は人とのすみ分けを前提に計画を立てる
完全な無人化を前提にした計画は、現時点では危うい。当面は、自動運転と人間のドライバーを組み合わせる運用が現実的である。ドライバーを減らすのではなく、不足分を補う位置づけで考えれば、現場の抵抗も小さくなる。
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