Waymoが中国製EVを数千台導入、安さと安全保障の板挟み

Waymoが中国製EVを数千台導入、安さと安全保障の板挟み
Waymoが中国製EVを数千台導入、安さと安全保障の板挟みのニュース解説イメージ

ニュースの概要

米Waymoが、ロボタクシーの台数を増やすため、中国の吉利グループ傘下Zeekrが造る電気自動車を数千台発注したと報じられた。車両は米国へ輸入され、アリゾナ州の拠点で自社のセンサーと自動運転ソフトが取り付けられて走る。年末までに約5,100台が入る可能性があるとされ、現在の保有台数を大きく上回る。一方で、中国企業製の車を米国の街の足として使うことには、国家安全保障の観点から懸念の声も出ている。技術の進歩だけでなく、誰が作った車を誰が動かすのかという問いが、改めて突きつけられた形だ。

引用元: Waymo、米国で中国製車両を数千台導入へ、国家安全保障を巡る懸念が浮上(New York Post)

分析・見解

台数を増やす壁は、運転技術より車の調達にある

ロボタクシー事業で次に問われるのは、技術の精度よりも台数である。Waymoはすでに実績を積んだが、車が足りなければ待ち時間は減らず、収益も伸びない。自動運転用の装備は車両本体より高いこともあり、土台となる車は安く、大量に、安定して手に入れたい。

ここで中国メーカーが浮上するのは自然な流れだ。電池から車体まで国内で一貫して作れるため、同じ性能でも価格を抑えやすい。

米国の関税と規制が、導入の道筋を複雑にしている

米国は中国製の電気自動車に高い関税を課してきた。さらに、通信機能を備えた車に中国製の部品やソフトを使うことを制限する動きも進んでいる。今回の報道は、そうした環境でも、事業側の需要が強いことを示している。

報道どおりなら、鍵になるのは「車体は中国製、頭脳は米国製」という線引きである。Waymoは輸入後にセンサーとソフトを自社で載せるため、運転の判断は自社の仕組みが担う。ただし、車体の電子部品や通信モジュールまで安全だと言い切れるかは、別の議論になる。

懸念の本質は、走る車が集める膨大な情報にある

ロボタクシーは、道路、歩行者、乗客の行動を絶えず記録する。いわば動くカメラの群れである。数千台が走れば、都市の細かな交通の流れまで把握できる。

この情報が外国政府に渡るのではないか、あるいは遠隔で車を止められるのではないか。こうした心配が議論の中心だ。過去にも、中国製の通信機器や監視カメラが米国の政府機関で締め出された例がある。今回も同じ構図で見られるだろう。

独自の視点:安全保障の議論は、車を作る国より整備する場所で決まる

見落とされがちだが、リスクは製造国だけで決まらない。車がどこで検査され、ソフトの更新を誰が管理し、通信がどこを通るかで、実際の危険度は大きく変わる。

たとえば、通信部品を取り外して自社製に置き換え、更新も自社サーバーだけで行えば、懸念はかなり小さくなる。逆に、国産車でも更新の仕組みが外部委託なら穴は残る。今後は、製造国の色分けよりも、どこまで中身を自社で握るかという点が評価の物差しになっていくだろう。

ビジネスへの影響

調達先の分散と、中身を握る設計が勝敗を分ける

今回の件は、移動サービスだけの話ではない。安い部品や完成品に頼る事業は、地政学の変化で一夜にして条件が変わる。調達先を複数持つこと、そして重要な部分は自社で握ることが、基本の備えになる。

具体的には、基幹となる制御やデータの扱いは自社で持ち、車体のような置き換えやすい部分は外から買う。この切り分けがあれば、規制が変わっても被害を小さくできる。

日本企業が今のうちに点検しておきたい三つの項目

第一に、自社製品や設備に組み込まれた通信部品の出どころを一覧にすること。第二に、ソフトの更新や遠隔操作の権限を誰が持つかを確認すること。第三に、取引先から安全保障上の説明を求められたときに、すぐ答えられる資料を整えることだ。

これらは自動運転に限らず、監視カメラ、産業用ロボット、物流機器にも当てはまる。海外展開をする企業ほど、早めに棚卸しをしておくと、取引停止や契約見直しの際に慌てずに済む。

費用の安さだけで選ぶ時代は終わりつつある

価格差は大きな魅力だが、規制変更で使えなくなれば、投資は無駄になる。調達の判断には、単価に加えて、将来の規制リスクを費用として織り込む視点が欠かせない。数年後に入れ替える可能性まで見込んで、契約や設計を組むのが現実的だ。

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