テスラのAI型かトヨタのインフラ協調か 日本の自動運転を二択で考えると見誤る本当の理由

テスラのAI型かトヨタのインフラ協調か 日本の自動運転を二択で考えると見誤る本当の理由
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ニュースの概要

日本経済新聞は、日本の自動運転が大きな分かれ道に立っていると伝えた。一つは、テスラが進めるAI中心の方式である。カメラ映像から運転の判断までをAIが学習し、道路側の設備に頼らず走ることを目指す。もう一つは、トヨタが主導する、道路や通信と車を連携させる方式だ。信号や周囲の情報を道路側から受け取り、安全性を積み上げる考え方である。どちらが日本の道に合うのかという問いは、車の技術だけでなく、法制度や道路整備、事故時の責任のあり方にも関わる。本稿では、この二つを対立ではなく役割の違いとして捉え直し、実務への影響を考える。

引用元: 日本の自動運転が岐路 テスラのAI型かトヨタ主導のインフラ協調か(日本経済新聞)

分析・見解

車に賭けるテスラと、道路に頼るトヨタ陣営の違い

テスラの方式は、カメラの映像を入力にして、ハンドルやブレーキの操作までを一つのAIで結ぶ「エンドツーエンド」型である(=入口から出口まで一本でつなぐ方式)。人の運転を大量に学ばせ、交差点でも工事区間でも、人に近い判断をさせる。道路に特別な設備は要らない。

一方、トヨタ陣営は、信号の情報や先の合流地点の状況を、道路から車へ電波で伝える仕組みを重ねる。高精度な地図や遠隔監視も組み合わせる。車の目に見えない場所を、道路や管制室が補う発想である。前者は「どこでも走れる可能性」を、後者は「走る場所での確実さ」を狙う。出発点は違うが、ゴールはどちらも運転手のいない移動だ。

狭くて左側通行の日本の道は、どちらの方式にも難題

日本の道は狭く、歩行者や自転車が車道のすぐ脇を通る。左側通行という違いもある。海外の走行データで鍛えたAIは、右折で対向車の切れ目を待つ場面など、日本特有の動きで迷う余地が残る。しかもAIは、判断の理由を後から説明しにくい。事故のたびに原因の説明が求められる日本の制度とは、相性が悪い面がある。

では道路側を整えればよいかというと、そう簡単ではない。国内の道路は百万キロを超える。すべてに通信設備を置くのは費用の面で無理がある。新東名高速の一部区間で、自動運転車向けの専用レーンを試す動きもあるが、これも限られた区間の話だ。どちらの方式も、単独で全国をカバーするのは難しい。

分かれ目は技術より、事故の責任をどう分けるか

日本では2023年4月の改正道路交通法で、特定の場所で運転手を置かない「レベル4」が解禁された。福井県永平寺町の送迎車両などが先行例である。ここで重要になるのが、事故が起きたとき誰が責任を持つかという点だ。

インフラ協調型は、自治体、運行事業者、車両メーカー、通信事業者が役割を分け合う。責任の所在を図にしやすい。AI型は、車の振る舞いの大半をメーカーのAIが決めるため、責任がメーカーに集まりやすい。私は、この違いが日本での広がり方を決めると見ている。当面は、決まった路線を走るバスや送迎で協調型が先に定着する。そこで集まる走行データが、AIを賢くする材料にもなる。つまり二つは競争というより、普及の段階が違うのである。

二つの方式はすでに歩み寄りを始めている

各社の動きを見ても、境目は薄れている。トヨタは米ウェイモとの協業を2025年に発表した。ウェイモは東京でもタクシー会社と組んで走行試験を進めている。日産は英ウェイブのAIを使う計画を示している。テスラも日本での走行試験に動いていると報じられている。AIを中心に据えつつ、地図、遠隔監視、保険、充電の拠点といった周辺を誰が整えるかが、競争の本題に移りつつある。

勝者は「一つの方式」ではなく、「AIの賢さと運行の安心を束ねた事業者」になる可能性が高い。

ビジネスへの影響

単一方式に賭けず、乗り換えられる契約にしておく

物流、バス、タクシー、不動産開発などで自動運転の導入を考える企業は、まず特定の方式に深入りしないことが大切だ。技術の優劣は数年で入れ替わるからだ。契約では、走行データの持ち主、車両や制御ソフトの入れ替え条件、通信設備の撤去費用を先に決めておく。方式が変わっても、運行の仕組みと顧客との関係を残せるようにするためである。運転手不足を補う目的なら、遠隔監視の担当者の育成も同時に進めたい。一人で何台を見られるかが、採算を左右する。

道路側の設備は、自動運転以外の用途と兼ねて考える

自治体や施設の運営者にとっては、路側の通信設備や監視カメラの投資判断が課題になる。自動運転だけが使い道だと、利用が少なければ回収が難しい。そこで、防災情報の配信、見守り、交通量調査など他の用途と兼ねて設計する。例えば、バス停に設ける通信装置を観光案内や災害時の連絡にも使えば、住民への説明もしやすくなる。国の補助金は期限や条件があるため、導入後の維持費まで試算して申請したい。

実証は半年ごとに数字で比べて見直す

実証実験では、「走れた」という結果より、比較できる数字を残す。人が運転を代わった回数、1キロ当たりの運行費、雨や夜間に運休した割合、乗客の満足度などだ。これらを半年ごとに見直し、AI型が強い場面と協調型が強い場面を切り分ける。社内では、運行を担う部署に加えて法務と保険の担当も早い段階で同席させたい。そうすれば、次の投資先を感覚ではなく根拠で選べる。結局のところ、迫られているのは技術の二択ではなく、投資の順番の決定である。

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